義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 梓は固まった。今度はまるで違う意味に、だ。
 お嫁さんとは。
 いや、意味がわからないはずはない。けれどそのような形容はおかしいだろう。
 だって自分は妹だ。ただの妹だ。
 ああ、でも渉が帰ってきて、おかえりなさいを言って迎えて、バッグを抱えて、そしてお風呂の用意やお茶の用意。
 ……確かに、夫婦であったらお嫁さんのすることなのである。
「え、えっ! な、なんで!?」
 かぁっと顔が熱くなる。お嫁さん、なんて。まだ遠すぎる出来事の話だと思っていた。
 いや、現実では十六才から結婚できるのだから、あと少ししたら結婚できる歳になってしまうのだけど……。
 混乱したゆえにそんなどうでもいいことを考えてしまって、しかしそんな場合ではない。
 おまけに混乱した思考の中で、頭の中に一瞬、渉の横でウエディングドレスなどを着ている自分が浮かんでしまって、もっと恥ずかしくなった。
「い、妹だからそんなの当たり前だよ! それに、兄妹じゃ、け、結婚なんて」
 言ったのに、渉はなんでもないようにテーブルのグラスを取り上げて、ひとくち飲んだ。からん、と氷が音を立てる。
「知らないのか? 血が繋がってないなら結婚はできるんだぜ」
 え、え、えええ……。
 もはや言葉にならなかった。渉はいったいどういうつもりなのか。
 いや、からかっているだけなのだろうけど。実際、笑みを浮かべているし。
 けれど渉はそういう、梓をからかうことはあまりしない。意地悪な性格ではないのだ。
 今のこれはどうなのかわからないけれど。
「ああ、ちょうどいい濃さだな。うまい」
 また褒めてくれる。梓の混乱はまったくスルーして。
「そ、そう……それなら、良かったけど……」
 ありがとう! といつもなら明るく言うところだけど、今はなんだかもじもじとしてしまった。
 自分が渉にしてあげていることは家族として当たり前のことばかりなのに、そういうふうに言われれば、くすぐったくてならなかった。
 そしてそのくすぐったさはずいぶん長いことおさまらず、その夜ベッドに入ってからまで続いてしまったのだった。
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