義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 たとえば、前回は主人公が大学に入って知り合った男子の一人にハプニングから抱きしめられてしまう、という事件があった。
 さすがにその展開はクラスの女子の間でものすごく盛り上がった。
 なにしろ、主人公が好きな男の人ではないけれど、彼は主人公のことが好きでものすごくイケメンなのだ。そんな彼が主人公を抱きしめる。
 少しひとに聞かれたくないような話をしていて、そこへひとがきたのでとっさに隠れて、そのはずみで……という、そうなっても仕方がないな、という状況。
 片腕で抱きしめてきた彼は主人公の名前を間近で呼び、瞳を見つめて……そしてそのまま顔を近付け……。
 梓はそれを見て、あわわ、と思ってしまった。隣ではお母さんも一緒に見ていた、というか、近くにいたのだ。タブレットでなにか見ているかしていて、テレビに視線は向いていなかったけれど、こんなシーンのものを見ていると知られてしまったら。
 すごく気まずいし、今後見るのを止められてしまうかもしれない。
 けれど、幸いそこでおしまいになった。二人が隠れていた、そこへひとがきたのだ。
 それは主人公の友達で、主人公を探しに来ていて、それなら隠れている必要はなくなった。
 主人公は隠れていた場所から出ていって、なにか、「探し物があったんだよ」とか、笑って言っていたし、友達も疑っていなかった。
 けれど、主人公のことを見ていた、片想いの彼はちょっと寂しそうにしていた。
 そこでその回はおしまいになった。
 よって、次回はいったいどんな展開になるのか。みんな気になってしまった、というわけである。
 告白されるのかもしれないよ。
 いや、それよりあの様子だといきなりキスとかされちゃったりして。
 そんなことを、男子に聞かれないようにこそこそと言い合うのだった。
 男子は特に興味が無いようだったけれど。少女マンガからのアニメなんて、興味を示す子のほうが少ないだろう。だからあまりはばかる必要はなかったのだけど。
 しかしこそこそと話す形になってしまったのは、アニメのことよりも、そのあとにいつのまにか変わってしまう話題からのことだった。
 もちろん、恋の話である。
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