義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 梓もいい評価がもらえてほっとしたので、その隣に座って自分のグラスを手に取った。
 ガラスのグラス。この夏買ってもらったものだ。
 今まで使っていた食器は、かなり前から使っているものも多かったので、こちらにくるとき、いくつか処分してしまっていた。少し子供っぽいな、と思っていたのでちょうどよかった。なじみがあったので寂しくはあったけれど。
 グラスの中身は麦茶だった。良い濃さにできていて香ばしかった。
 グラスは普通の雑貨屋さんで買ってもらったものだ。しっかりと厚いガラスで、花の模様が控えめに入っているだけのもので、前に使っていたイラスト付きグラスに比べると、ずいぶんおとなしめになった。
「そうだね。お兄ちゃん忙しいのに……でも今回も上位入りだったよね」
 ごくんと麦茶を飲んでから言う。三年生のテストが返ってくるのは、今回、一年生より少しだけ早かった。昨日もうもらってお父さんとお母さんに見せていたのだ。
 三年生の成績掲示も今日だった。それを梓は友達と見に行った。
 渉は今回は総合四位。梓が前に見たときより数字はひとつ上がっていた。きっと自分でもとても勉強を頑張ったのだろう。自分のことのように、梓は嬉しくなってしまった。
「ええ。掲示されたって言ってたわ。きっと受験もなんの心配もないわね」
「そうだよね」
 受験。
 梓はちょっと考えてしまった。でもすぐに思い当たる。
 大学受験だ。受験のことは早めに考えたほうがいい、と前にちらっと聞いていた。
 でもお母さんの言う通り、お兄ちゃんのことだ。学年で五位や六位なんて取ってしまうのだ。きっとレベルの高い学校を受けられるし、合格してしまうのだろう。
 受験、かぁ。
 梓は今度、自分のことを思いだした。
 一応、受験というものを受けたことがある。
 それはこの慶隼学園に転校してくるときのことだ。慶隼学園は私立校なので、簡単な受験があったのだ。
 とはいえ、受験のテストはそれほど難しいというわけではなく、普段通りの勉強だけで受かってしまった。難しいのはむしろ、入学してからの勉強だったのだけど……。
 それは前述のとおりである。
 それでも緊張した。それまでいた烏間中学はただの公立校だったから、受験なんてなかったし。小学校も公立校だったし。
 梓はふと、慶隼学園にきたときのことを思いだした。もう半年も前になる。
 転校のための受験を受けて、見事合格をもらって、手続きのために初めて慶隼学園を訪れたときのことである。
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