義理のお兄ちゃんの学園プリンスに愛されちゃってます~たくさんの好きをあなたに~
 それから季節は少しだけ進んで、あたたかい季節になったときのこと。
 桜の花が咲く、春の盛り。
 変わったのは季節だけではない。あれからの数ヵ月で梓の身辺は大きく変わっていた。
 着ているのはもう紺色のセーラー服ではない。転校してきてすぐの、慶隼学園中等部で着ていた制服でもない。
 ワインレッドのチェック柄のスカート。上は紺のブレザーに、白ブラウス、赤いリボン。
 今までの制服と比べてしまうと、天と地のようだった。こんなドラマで出てくるようなオシャレな制服が着られるのは嬉しかったけれど、はじめはかわいらしすぎてどうにも落ちつけなかった。
 でも転校してそろそろ三ヵ月が経つのだ。ずいぶん慣れた。
 今までの髪型では慶隼学園の制服には似合わないと思ったので、髪型も変えた。茶色の長い髪は、おろすようにした。
 ふたつに結んだスタイルも気に入っていたけれど、どうも地味に見えてしまって。
 そういう格好にしてみると、まるで自分がお嬢様かなにかになったように感じてしまった。意外と外見的に違和感はなかったけれど。
 初めて慶隼学園を訪れたとき。ちょうどお母さんの都合が合わなくて、一人で訪ねることになってしまった転校手続き。ひどく緊張してしまったものだ。
 真冬に転校なんて、あまりないことだと思う。普通は春に、学年が変わるタイミングとか……そういうものが一番多いだろう。
 けれど、梓には少々特殊な理由があった。
 ひとことで言ってしまえば、『この学校に早く慣れるため』という理由である。
 数ヵ月前から、梓の身に、変化がいくつもいくつも起こった。そしてそれが原因で、学校が変わるという変化までついてきた。
 学校が変わればもっと色々なことが変わっていく。友達も、先生も、生活習慣だって。
 それでも梓はその変化を受け入れ、慣れていくしかなかった。
 すべての変化の原因。それは家庭環境が大きく変わってしまったことなのである。
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