ずっとあなたが好きでした。
そうは思ったものの、いざ、打とうと思ったら、何と打てば良いのかわからなかった。



『今日は、本当にびっくりしたよ。
映画、面白かったな。』



読み返してみると、何か違和感を感じた。
なぜだろう?びっくりしたのは本当なのに…



(あぁ、そうか…)



多分、会えて嬉しかったことを書いてないからだと気が付いた。



『今日は、本当にびっくりしたよ。
でも、久しぶりに会えて嬉しかった。
元気そうで良かったよ。
映画、面白かったな。』



書き足したことで、違和感はだいぶ薄らいだ。
だが、最後の文章は嘘だ。
今日は、ストーリーが全くわからなかった。
ちゃんと見てたら、もっと楽しめたはずなのに。



僕は、当時の記憶を辿った。
確か、あの日、映画館はけっこう混んでいた。
でも…前の方に空席があって、翔子が走って席を取りに行って、そこに僕達は並んで腰掛けて…



十年以上前のことなのに、そんなことを覚えていたとは、自分でも意外だった。
とはいえ、僕や翔子がどんな服装をしていたのかは全く覚えていない。
ストーリーはネットであらすじを見たから、朧気に思い出したけど、この記憶も曖昧だ。
あぁ、そういえば、後半に主人公の二人のキスシーンがあって、それが妙に長くて、気まずかったな。



忘れかけていた甘酸っぱい思い出に、僕はくすりと笑った。
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