ずっとあなたが好きでした。
結局、話せなかった。
僕は、こんなにも見栄っ張りだったのかと、自己嫌悪した。



コーヒーを飲みながら、翔子は話してくれた。
今は付き合ってる人はいないと聞いて、なぜだか僕は気分が良かった。



だけど、まだ心にひっかかっていることがあった。
それは、先日のガトーショコラのこと。
本当に翔子に彼氏がいないのだとしたら、あの行為は翔子の意思でしたことになる。



翔子は、僕のことが嫌いなのか?



訊きたいけれど、訊きにくい。



「あ、翔子…ケーキ食べないか?」

「そうだね。何か食べようかな。」

メニューを見て、僕はまたガトーショコラを選ぶことにした。



「決まった?
僕は、この間と同じガトーショコラにするよ。」

僕がそう言うと、翔子の顔が強ばった。



「翔子…ガトーショコラ、嫌いなのか?」

ついに言えた。
心にひっかかっていたことが…



「潤…私ね、チョコの香りが苦手なんだ。」

「え?……嘘だ。
翔子はチョコが大好きだったじゃないか。
僕にチョコを作ってくれた時も、いっぱいつまみ食いしたつて…」

翔子は深く頷いた。



「そう、私はチョコが大好きだった。
でも、ある時から全然食べられなくなったんだ。
食べるどころか、チョコの香りだけで、もう気分が悪くなっちゃって…」

翔子は嘘を吐いてるようには見えなかった。
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