ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

「え、ん?ちょっと。」

「ん?」

「帰るの?」

「うん。」

 当たり前だと言わんばかりに、こちらを見下ろす。

 まだまだ話を聞いてもらおうと思っていたのに、あっさりと見捨てられた。私は零士さんに負け、相変わらず自由な双葉の行動には呆気に取られた。


「だって、話す相手は私じゃないもん。話はいつでも聞くけど、晴日が今話すべきなのは、ね?」

 そう言って、スタスタとコップを片付け、こちらにヒラヒラと手を振る。

 口が半開きになりながら、軽い足取りで店を出て行く彼女に、ふっと笑みが溢れた。


「話す相手ねー。」

 声を漏らしながら頬杖をつき、窓の外を眺める。

 体をうきうき弾ませながら、楽しそうに零士さんと並ぶ双葉。そんな2人の様子を微笑ましく見つめ、私は深く息を吐いた。







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