ホオズキの花 〜偽りから始まった恋の行方〜

 でも、疑われるのも無理はない。父は、私が矢島さんと結婚したかったことを知っているから。それを分かっていて、桜と結婚させたのだから。


「待って、お父さん違うの。」

 黙り込む私を庇うように、今にも消えそうな声を出す桜。車椅子でゆっくり進んでくると、私たちの間に割って入った。

「晴日は、私が呼んだの。ドレスを見て欲しくて。そしたら急に苦しくなって、晴日のせいじゃない。先生と矢島さんを呼んでくれたのは、晴日なの。」


 桜は自分の体が弱いせいで、瀬川家の娘としての重圧を、私一人に全ておわせてしまったと責任を感じている。だから、私が責められそうになると、必ず庇おうとする。

 昔からずっとそうだった。


「桜.....」


「そうか。それならいい。」

 父は、それだけ言うと部屋を出た。隣であたふたとする母も、先生と矢島さんに会釈をして、父を追っていってしまった。


「晴日、ごめんなさい。私....」

「花嫁がそんな顔しちゃだめ。先に行ってるね。」

 式が始まるまで、あと20分。今更この結婚がどうこうなるはずもなく、いろんな思いをギュッ堪えて、そう言うしかなかった。


 "妹に、式をめちゃくちゃにされた花嫁"

 桜がそんな白い目で見られるようなこと、私にはできない。恥をかかせるなんてもっての外だった。

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