恋する乙女はまっしぐら~この恋成就させていただきます!~
「ふふっ、えへへっ。先生も素敵です。白衣姿も捨てがたいけどスーツも格好良いです」

嬉しくてへらへら笑う私を見て先生はまた嫌そうに顔をしかめた。

「お前…。
そのしまりのない顔どうにかしろよ。けどまぁそれはそれでそのままでとりあえずいいか。
だが、敬語だ。おい、その敬語はどうにかしろ!今から敬語はやめて普通に話せ」

「えっ?普通にってなんでですか」

「へんだろ、恋人なら」

恋人…。先生の言葉にますます私の顔はだらしなく緩む。

「あっ、そっか…。うん、そうだよね!恋人だよね、私たち。
えっと、じゃあ、それなら…沖田先生って呼ぶのもやめたほうが…」

自分で言っておきながらかあぁっと顔が赤くなる。

なのに…。

こんなにドキドキしている私を先生はじろっと一瞥すると


「いや、それはそのままでいい。そのままでいろ。人前で俺の名前なんて絶対に呼ぶな。俺の院内でのイメージが崩れる。お前を連れて歩くことですでに俺のイメージが大幅にくずれるんだ。だから外でも二人の時も"先生"でいい。わかったな真琴」

「ズルい…自分だけ…。しかも今ものすごく失礼なこと言われたきが…」

口を尖らす私を見て先生がふっと微かに笑った。

笑った!?

うん、笑ってる。先生が今、目の前で笑っている。

「ふふっ」

嬉しい。内容はどうであれ、あの沖田先生が私と話をしてしかも笑顔を浮かべている。

恋人…なんだ。

私たち本当に恋人なんだ。今はまだ偽りだけど、絶対に本物になってこの笑顔を独り占めするんだ。
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