穂先輩が甘々すぎる。



この前見かけた時も、ふたりはすごく仲良さそうにしてたし。


あの女の人もすごくすごく美人さんだったから、きっと穂先輩とふたり並んでいると絵になる。


街中の人々は穂先輩だけじゃなく、隣の女の人にも目を奪われているだろう。


穂先輩の隣に私が並ぶより…あの女の人が並んでいる方がお似合いなんじゃないかな。


…なんだろう、このモヤモヤした気持ち。


私は胸に手を当てて、服をぎゅっと掴んだ。


私が呆然と立ち尽くしてからすぐに、あっという間にふたりの姿は混み合っている人々の中に飲まれ、私の背丈ではすっかり見えなくなってしまった。


なんだか、すごく嫌な気持ち…。


穂先輩があの人と一緒にいるのを…これ以上見たくない。



穂先輩は…ふたりはもちろん、私のことには気づいていない。


目も合わなかったし、こちらの方を振り返りすらもしなかったから。


穂先輩に声をかけなくて、良かった。


会えないよ、こんな気持ちじゃ。


唇を噛み締めて、拳を握って。


踵を返して穂先輩たちとは反対側の人混みに紛れ込んで、虚しい気持ちで図書館へと向かった。


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