DIYで魔法世界を再建!
夜の冷たい空気が口の中に直接流れ込む。もうすぐ夏を迎えるけど、それでもまだ夜は若干ヒンヤリしている。
若干カサカサになった唇を舐めながら、私はぼんやりと歌い続ける。気づけば後ろにいる筈のヌエちゃんは、グーグーと寝息を立てながら寝入ってしまった。
私の歌には催眠効果があるのかもしれない。生前テレビで、「歌手の歌声を聞くと眠くなる現象が自然と起こる」なんて話題を耳にした。
私には歌手としてのセンスがあるのかもしれないけど、それを使ってこの世界でお金稼ぎはできないだろう。何故ならまだそこまで文明が進んでいないから。
生前の世界でも、お金が流通するようになったのは、世界によってまちまちだし、縄文時代や弥生時代は物々交換が主流だったみたいだから、今の私達は、まだそこら辺の段階だ。
・・・いや、そこにすら至っていないと思う。何故ならブツブツ交換できる程の物資がないから。初期に比べると生活はだいぶ安定しているけど、まだまだ問題は多い。
そんな中で怒った今回の一大事に、頭を抱えない人なんていない。ここまで生活基準を高めるだけでも相当苦労したのに、それを一瞬で奪われでもしたら、私でも発狂する。
あの生物は、飢獣でもなければ、この世界に原生していた動物でもない。だとすると、一体何なのか・・・
まさか『地球外生命体』なんて事実だったら、一周回ってずっこける。そもそもこの世界にとっての『宇宙人』とは一体何なのだろう。
生前の世界では、『UMA』やら『UFO』やらの特集番組や特集雑誌が、一部の市場になっていた。それくらい『未知』や『不思議』は人々を魅了しているのだ。
確かに今回の一大事も、『未知』や『不思議』がわんさか詰め込まれているけど、楽しめる気分にはなれない。
命が関わるだけでこんなに神経がピリピリしてしまうなんて、思いもよらなかった。
荒地を彷徨っていたヌエちゃん達にとっては、似た状況を何度も体験していたのかもしれないけど、それでも慣れないのは、逆に正常である証拠なのかもしれない。
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