さよならは響かない
午後十時半、きみの部屋、秘密。





─── …




「─好きなんだよ、」



消えちゃいそうな小さな声が、絞り出すようにそう、言葉を紡いだ。

くしゃ、と目をつぶって皺ができる。
泣きそうな顔、わたしも同じ顔してる。



「…あのね、わたしも、」

「わかってる、」



好きなの、
そう、口にしようとした言葉は遮られた。


視線が絡んで、それから。
自分の手のひらを、ぐっと握りしめた。

昔よりも大きくなったこぶしが、震えていた。




「─わかってるから、ミオに話したんだよ」

「、シキ、」

「…なあ、もうしんどいよ」





シキの部屋。


青と白で完成されている、青はシキの好きな色。


この部屋に閉じ込められちゃいたかった。
そうしたら、何も見なくて済むのにね。




隣の部屋から笑い声が聞こえる。
壁一枚で仕切られた部屋の温度は、測らなくたって全然違うのがまるわかりだった。


楽しそうで幸せそうな、ふたりの姿を見れば、
わたしたちの気持ちは誰にも言えない、


伝えることだって、不可能だ。



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