幼恋。
なんて、椛にこっぴどく叱られた僕は眠気も来なくてリビングに顔を出すと
おりちゃんの父親である椎がいた。
「珍しいね、椎が暇そうにテレビ見てる」
椎はお医者さんだから忙しくて、あんまりのんびり何かをしてるのを見たことがないから、そう話しかけると
僕の言葉が面白かったのか椎はカラカラと笑った。
「珍しく暇だからなー!
何かあったのか?顔がくらいぞ〜」
椎は僕にそういうと、自分の隣をポンポンと叩いて僕を招いた。
椎はいつも元気ですごく忙しいのに合間を縫っておりちゃんはもちろん、僕や椛とも遊んでくれたり…
父親より正直父親らしいことしてもらってる。
ちなみに僕と椛の父親と母親は2人で今は海外に旅行中。
「さっき椛におりちゃんのことに関して怒られたんだよね。
それで自分の不甲斐なさを実感中です」
「あはは、椛は厳しいからなぁ」
椎の隣に座って僕が笑うと椎も笑ってくれる。
椎の笑顔はおりちゃんに似てて、どこか落ち着くような笑顔だから安心するんだよね。
「まぁさ、俺はお前らのおりはの守り方とか関わり方は分からないけど、間違いなくおりはが元気でいられるのはお前達2人がいるからだと思ってるよ」
「そうかな…」
「ああ、お前らと幼なじみでお前らがおりはをずっと大事にしてくれてる。それだけで友達がいなくてもおりははひねくれず明るい子になったからな」
感謝してるよ、と笑う椎が本当の親だったら良かったのにと何度思ったことか。
僕の両親は2人で旅行、2人でお出かけばかりであまり小さい頃から遊んだりお世話してもらった記憶もない。
幼かった椛もそれが嫌でグレていったのは明らかだろう。
「それに、叶にはうちの秘密も内緒でいてもらってるからもっと感謝してるよ」