離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました

　そして今日、約束の一カ月。

　このままもう、本当に終わってしまうかもしれない。

　補修された離婚届を前に、今日まで何度も息を詰まらせた。


「それで、話って？」

「ああ。もう、単刀直入に言うな。離婚して、俺と一緒にならないか？」


　いきなり告げられた言葉の内容に、内心驚きあっ君を凝視する。


「海外に転勤が決まったって言っただろ？　俺と一緒に行かないか、心機一転」


　会って話したいこととはこのことだったのかとわかると、返す言葉を慎重に選ぶ。

　返答は考える必要なんてなく、もう決まっている。


「ありがとう。でも、ごめんね。あっ君とは一緒になれないし、一緒にも行けない」


　一か月前、離婚届を持って達樹さんに会いにいった。

　あの日の私にとってこの一カ月間は離婚に向けて進むための期間のはずだった。

　だけど気づけば、達樹さんと過ごす時間を楽しみ、時にドキドキしてときめいて、そんなことは忘れていた。