離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました
メッセージアプリを立ち上げ、みのりとのトークルームを開く。
明日の朝、ホテルに戻れるなら戻って、一緒に食事の時間を取りたいと思う。
急な呼び出し、仕事とはいえ、今晩ひとりにしてしまったことで俺は更にマイナスポイントを稼いでしまっているに違いない。
病院に到着しスクラブスーツに着替え、足早に救命救急センターへと向かう。
「あっ、曽我先生、ありがとうございます!」
その途中の通路で、慌ただしく駆けていく救急担当の看護師と出くわした。
「今日帰国されたんですよね。そんな日に来ていただけるなんて」
「城田が熱発したって聞いた」
看護師は「そうなんですよ、夕方連絡があって」と答える。
当直担当だった一年後輩の城田が、急な発熱のため欠勤していると連絡が来たときに聞いている。
丈夫な奴だし、多少の発熱では解熱剤を使って仕事に出てくるのが普通だから、休んだ方がいいと自分で判断するほど重い症状なのだろう。
「曽我先生、間もなく重症患者さんの搬送があると消防から連絡があって。大破した車体から救出に時間がかかったようで」
看護師も忙しさのあまり先を急ぎながら振り返ってそう伝えてくる。
「了解」
これは忙しい夜になりそうだと予感しながら、『高度救命救急センター』と表示された自動ドアの入り口を入っていった。