離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「空にどんな恨みがあるんだって睨み方。こんな快晴なのに失礼だな」


 空はこんなに気持ちいい晴天なのに、私の心は真逆の状態。

 どんよりを通り越し、黒い空に土砂降りの雨だ。


「でも、今日それを渡してきたらすっきりするだろ」


 私の飲むアイスカフェラテの横に広げた紙切れを眺め、あっ君はコーヒーの入るカップを手に取る。

 緑で印字された〝離婚届〟の紙には、右側の妻の部分に私の名前がすでに記入されている。


「うん! 今日こそすっきりするつもり」


 そう力強く言うと、あっ君は仕方なさそうにまた苦笑を浮かべた。

 婚姻届を提出したのは、今からちょうど一年前──。

 親が勝手に進めたお見合い話で、私は七歳年上の曽我(そが)達樹という男性と結婚することになった。

< 7 / 145 >

この作品をシェア

pagetop