離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


 どうしよう……この体勢のままずっといるのかな……。

 これじゃもう、緊張しちゃって映画観てる場合じゃないんだけど……!


 ケーキをあーんしたあたりから、意識は映画から達樹さんに持っていかれてしまっている。

 時間的に中盤に差し掛かった映画は盛り上がりを見せ始めているけれど、大事な部分をどうやら見逃したようだ。

 視線を落とせば、お腹の前で組まれた達樹さんの大きな手。

 長い指と血管が浮き出た甲を見ているだけで、鼓動が忙しない音を立て始める。

 このままではダメだと、再び映画に入り込もうと壁にかかる画面に集中し始めた時、突然大人しく組まれていた達樹さんの両手が私の両胸に宛がわれた。


「やっ」


 思わず出た声を楽しむように、達樹さんの手は胸の膨らみをやんわりと包み込む。


「っ、あ、あの、達樹さん?」

「ん?」


 とぼけたような声が背後から聞こえてきて振り返ると、そこには悪びれる様子もない達樹さんがにこりと微笑んでいた。

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