離縁するはずが、エリート外科医の溺愛に捕まりました


「早まりませんね。吉田さん、全身骨折ってるんだから、まだ退院することなんて考えたらダメですよ」

「いや先生、そうなんだけどさ、あんまり仕事も休めないだろ? 落ち着かなくて」

「お気持ちは察しますが、お知らせしているのは治療の計画をしての退院時期ですから、早められても数日程度ですよ」

「それでもいいよ! 頼むよ先生」


 生死を彷徨うほどの状態で搬送されてきても、回復してくるとだいたいの患者が早く退院させてくれと言い出す。

 思わぬ事故や事件で入院する羽目になった場合こそそんな患者が多い。


「わかりました。でもお約束はできません。今後の経過を診て早められるようならですからね。あまり期待しないように」


 午前の回診を終えてカルテの入力をし、医局へと戻って自分の席に腰を落ち着ける。

 呼び出されるまで読み始めた論文の続きを読もうと文字を追い始めたところで、デスクの片隅に置いてある私物のスマートフォンが震えた。

 画面の通知にみのりの名前が見えて、すぐに手を伸ばす。

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