Pierrot

「みんな笑ってる……」

幼い詩音は、自分が笑っていれば周りも笑うのだとこの日、学習した。そしてこの学びは詩音のこれからの人生の歩き方を大きく変えていくことになる。

そして、詩音はこの時に学んだことを忘れないまま高校一年生になったのだ。



黄色のネクタイを結び、ブラウンの落ち着いたデザインのブレザーを着て、ネクタイと同じ黄色のラインが入ったプリーツスカートを履く。鏡に映る詩音は、今日もいつもと変わらない笑顔だ。

「おはよう！！」

朝、教室に来る人に詩音は次々に笑顔で挨拶していく。友達は「朝から元気だね〜」と呆れたり、「おはよ〜！」と言いながら抱き着いてきたりした。

詩音はこのクラスのムードメーカー的存在で、いつも笑顔として認識されている。でもそれを詩音は誇りに思っていた。悲しい顔よりも、笑顔の方が人は似合う。

「詩音、聞いてよ！昨日さ〜うちの親がうるさくって！！」

友達と輪になって話し始めると、必ず誰かが愚痴を言い始める。いつも笑顔の詩音は相談しやすいらしく、詩音に気持ちを吐き出してくれるのだ。