分岐点  ~幸せになるために

毅彦の言葉の せいなのか。

満開の桜の せいなのか。


食事の間も 今までと 違う雰囲気が

私達の間を 漂っていた。


いつもと同じように 冗談を言って 笑っても。

言葉の合間に 切ない瞳で 私を見る頼太。


今まで 感じなかった 居心地の悪さは

私を 甘い気分にするから。


んっ? もしかして 私が 気付かなかっただけ?


頼太は ずっと こんな目で 私を見ていたの?


違う… 違うと思うけど…


毅彦に言われるまで 気付かないって。

私 鈍感 過ぎるでしょう。


「今日は 沙耶香 大人しいな?」

「えっ? そうお? そんなことないよ。」


「桜 綺麗だから 少し 歩こうか?」


食事を終えて 店を出ると 頼太は言う。


「そうだね。お花見しよう。」


桜のトンネルを 見上げて。

サンプラザ前の広場に 入る。


同じような 恋人達で 賑わう広場で。


頼太は いきなり 私の手を 握った。


「んっ? えっ? 頼太…?」


「沙耶香。俺と 付き合ってください。」


「えっ? ええぇ? ちょっと待って。」


私は 驚いて 間抜けな声を出す。


だって… 無理でしょう。


毅彦のこともあるし。

それに頼太は 私より 3才も若いんだよ。


「沙耶香は 俺のこと 弟みたいに思ってるって 知ってるけど。俺 真剣だから。これからは 俺のこと 男として 見てくれないかな。少しずつでいいから。」


「うん… ありがとう。少し 考えさせて。」


曖昧な返事しか できない私を

頼太は 苦笑して 頷いてくれた。


私は 今の関係 気に入っていたんだけどなぁ…







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