分岐点  ~幸せになるために

毅彦が 私の部屋に 来たのは

頼太に告白された 翌週。


私の中では ほぼ結論が 出ていたけど。

まだ 毅彦を きっぱり拒むことは できなくて。


いつものように 熱く抱かれた後で。

毅彦の腕に 包まれながら。


「あのね。私 頼太に 告白されたの。」

私は 毅彦の顔を見ずに 言う。


「えっ。」

「……」


「沙耶香は どうしたいの?」

「うん……」


「行くなよ。ずっと 俺と一緒にいて。」


毅彦は 私を 強く抱きしめて言う。

ハッとして 私は 毅彦の胸から 顔を上げる。


毅彦と 目を合わせると


「ごめん。嘘だよ。」

「えっ…?」


「沙耶香。その子に 幸せにしてもらいなさい。」


毅彦は 優しい目で 私を見つめる。


「毅彦さん…?」


「俺は 沙耶香を 幸せにできないから。」

「私 毅彦さんと 一緒にいるとき 幸せだよ?」


「ありがとう。」


毅彦は 私をギュッと 抱き締めた後で ベッドを降りた。


「そんな大事なこと 来たらすぐに 言わないと 駄目でしょう。」


身支度をしながら 私を 振り返る。


「言ったら 毅彦さん。私を 抱いた?」

シャツだけ 羽織って 私も ベッドを降りる。


「だからさ…もう 俺に 抱かれたら 駄目だよ。」


「毅彦さん。物分かりがいいね。私を 責めないの?」

「俺が? 沙耶香を責める資格ないよ。俺には。」


別れ話しを しているはずなのに。

優しい空気に 包まれたままで。


いつもと変わらない 2人。


このまま 毅彦は 帰って。

また 来週になれば 私の部屋に 来るみたいに。








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