囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




   ★★★




 シュリがいた世界での王子様といえば、優しくてかっこいい、そして強い。
 そんな夢のような理想を物語の中で描いていたのだろう。

 けれど、実際の王子は違う。
 いや、本当にそんな王子もいるのかもしれないが、シャレブレ国では理想の王子と程遠い。
 だからシュリにはバレたくなかった。


 「いくぞ」
 「はい」


 この日は街はずれになる廃墟同然の建物周辺に待機していた。
 闇夜に紛れるように、ラファエルとリトは真っ黒な服に身を包んでいた。ふわふわとラファエルの傍で浮いている小さな妖精アレイも、黒いマントをつけていた。

 ここはある組織の移転した隠れ家である可能性が高いと警備隊から報告があった場所だった。昨晩、先に調査をしたリトが「今日は隠れ家にいる可能性が高いと判断しました」とラファエルに報告したため、ラファエル本人も動く事になった。
 今日は違う場所で取引が行われるようで、人員も少なくなっているらしい。そしてラファエルが最も重要視していた人物がこの場所に残るだろうと思われたのだ。案の定、先程大人数がこの隠れ家から出てきたが、対象人物の姿はなかった。リトの調べはやはり正確だ。

 必ず、見つけ出す。
 必ず、だ。
 それが、彼女を悲しませることになったとしても。
 
 ラファエルはギュッと手に力を入れて握りしめる。



 ラファエルの言葉の後、3人は急いで、かつ静かに隠れ家に忍び込んだ。
 見張りには3人ほど体格の良い男が居たが、リトがあっという間に倒してしまう。彼は気配を消すのが上手く、気づいたころには自分の懐に飛び込まれており、あっという間に短剣で切りつけられる。もちろん、命まではとらない。話しを聞きたい事もあるので生かして連行するのだ。



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