囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
28話「妖精、魔法に導かれる」




   28話「妖精、魔法に導かれる」



 ラファエルは大きなベットで横になっている。安らかな寝息を聞いて、朱栞は少しだけ安心しながら、彼を見つめる。
 町の医者に来て貰うと、「大きな怪我ではないが、雷が当たった場所の火傷が酷い。魔法で応急処置をしたので、治りは早いだろう」との事で、すぐに動けるようになる、という診察結果だった。
 それを聞いて、ホッとしたものの朱栞の気持ちが晴れるわけもない。朱栞はラファエルの手を握りしめて「ゆっくり休んでね」と伝えて、ゆっくりと部屋を出た。

 廊下には心配そうにラファエルの部屋を見つめる護衛部隊の男が数名立っていた。そこから出てきた朱栞を見る目は冷たい。朱栞は「護衛、ご苦労様です。よろしくお願いします」と精一杯の笑顔で挨拶をしたが、男たちはぎこちなく敬礼をするだけだった。



 ラファエルは怪我を負った。
 一緒にベットで寝る事はできない。そんな理由をつけて、朱栞は自分の部屋で休む事にした。メイナはすぐにベットメイクを済ませてくれ「ラファエル様、心配ですね。明日の朝にお見舞いに向かいましょう」と、言ってくれたが朱栞は曖昧に返事を返した。


 「あなたの愚かな約束を守って、ラファエル様は怪我を負ったのです」


 そのリトの言葉が頭から離れない。
 自分のせいで、自分が彼と交わした約束を守ってラファエルは怪我をした。敵の雷撃を咄嗟に避けたらしいが、避けきれずに肩に傷を負ったのだという。
 もし、朱栞があんな約束をしなければ、彼は傷を負わなかったかもしれない。それに、もし彼が攻撃を避けなければ、どうなっていたのだろうか。考えるだけでも恐ろしい。
 
 

< 122 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop