囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 彼が異世界でどんな生活を送っているのか、朱栞は心配で仕方がなかったが、それは杞憂だったようだ。彼は楽しんでいた。目新しい世界を、子どもが新しい玩具を与えられた時のように、目をキラキラとして。穂純の瞳にはキラキラと光っているようでいて、目の奥には夜が広がっているように感じられ、朱栞の体は冷えていくようだった。
 やはり、ここに一人で来たのは間違えだった。国王が言っていた事は、本当だったのだ。朱栞の勘がそう伝えてくる。穂純から早く離れろ、と。


 「朱栞は、ここに来たばかりの時は大丈夫だった?ハーフフェアリだったんだ、大変だっただろう」
 「いえ、私は1番始めにラファエル様が見つけてくださったので、大丈夫でした」
 「へー、王子様がね。それは、ラファエル様は、ラッキーだったね」
 「え……」


 朱栞がラッキーなのではなく、ラファエルが。それは、朱栞にとっては思ってもいない言葉だった。それは、朱栞をハーフフェアリとして価値がある、としか見てない、そう思っているという事だ。
 やはり、穂純は妖精を価値があるものだと見ているのだろう。

 朱栞は、小さく息を吐いた後、彼に本当に聞きたい事を話すことにした。


 「……穂純さん。穂純は、昨晩ここに居ましたか?」
 「どうして?」
 「この部屋で昨日、魔法からの爆発があったの。そこで、ラファエルは攻撃されて負傷したの。だから、ここに私は来たの。穂純さんは、知ってますか?」
 「朱栞は、魔力が高いね……」
 「え……」
 「自分より魔力が高い相手に勝つ方法は何か知ってる?」
 「穂純さん、何を言って…」
 「君より俺はこの世界に居る期間が長い。それに、魔法の知識も多い。それが勝因だよ」
 「あ、れ………」



< 146 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop