囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。




 「ラ、ラファエル様。お呼びでしょうか?」
 「シュリは、シュリはどこにいる。彼女の魔力も感じないぞ」
 「も、申し訳ございません。ラファエル様の看病をされていると思っておりまして、本日はお会いしておりませんでした。今は、人間のお姿に戻られている頃ですので」
 「今日、彼女に会っていないのか?」


 ラファエルは動揺しながら、呟き考える。
 城に誰にも気づかれずに入る事は難しいはずだ。だが、昨日会った穂純という男の契約妖精であるランは魔力を消す力があるようだった。ランが侵入しシュリを連れ去ったのだろうか。だとしても、シュリが何も抵抗しないはずもないだろう。と、なると、考えついた結論は1つしかなかった。
 シュリが自分でこの城を抜け出したという事だ。


 「ラファエル様。シュリ様に何かあったのですか?」


 メイナは不安そうにラファエルにそう聞いてくる。
 きっと自分が近くにいなかった事で責任を感じているのだろう。先ほど、ラファエルも強い口調で彼女に問いただしてしまった。きっと、何かあったと心配しているはずだ。


 「シュリがいなくなった。何か心当たりはないか?」
 「シュリ様がっ!?そんな……」
 「些細な事でもいい。何か最近で思い当たることはないか?」
 「そうですね。最近は、本をおつくりになると、とても楽しみにしておられて。作業を集中して取り組んでいらっしゃいました。あとは、これは他の者から聞いたのですが」



 何かを思い出したのか、メイナは少し言いにくそうに言葉を濁した。ラファエルは「安心しろ。俺は彼女が心配なだけだ。些細な事は不問にする」と、言うとメイナは安心した様子で、ゆっくりと口を開いた。




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