囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。
12話「妖精、戸惑う」




   12話「妖精、戸惑う」


 アレイは、スペインの妖精「シャナ」に似ているな、と朱栞は思った。
 シャナは水の妖精であり、洞窟で竜と暮らしているという伝説があるのを朱栞は知っていた。そのため、スペインでは妖精といえば、金髪を思い浮かべるという。
 ラファエルもスペイン語も話すし、彼もそれを知ってるのではないか、思った。

 シャナを思わせる目の前の妖精は、朱栞を睨めつけており、ラファエルも苦笑いを浮かべていた。


 「……アレイ。そんな事を言わないでくれ。俺にとって大切な人なんだ」
 「私の方がずっとラファエルと一緒に居たのに。この子の方が大切なんでしょ。むかつくわ」
 「彼女はとても素敵な女性だ。契約妖精同士、仲良くして欲しい。そして、魔法を教えてあげてくれ」
 「いやだって言ってるじゃないっ!私はあなたが産まれた時から、ずーーーっと、目をつけてたのよ」
 「またその話しかい………?」


 ラファエルは、顔を手で覆い大きくため息をついた。
 どうやら、彼女の言い分を彼は幾度となく聞いているようだ。朱栞は、彼とアレイのやり取りをただ茫然と聞くことしかできない。


 「赤子の時にあなたを見つけて、これは絶対にイケメンになるって確信したわ。大きな瞳に屈託のない笑顔は上品さもあって美しくて、肌も髪も艶があって……」
 「赤ちゃんは肌も髪もつやつやだと思うんだけどな……」
 「それに!魔力も多かったし、何より立場は王子でしょ。そんな男と契約したかったんだから、ずっと目をつけていたの!当たり前でしょ。私ぐらいの魔力を持ち主は、それに見合う相手じゃなくちゃいけないわっ」
 「な、なるほど………」
 「…アレイはこういう強気なところもあるけど、実力は確かだよ。水と地の魔法を主としているんだ。2つの力が同じぐらいもっている事。そして、魔力が等しく強いのは珍しい事なんだ。それに、シュリの方が魔力は強いけれど、彼女は戦い慣れているから戦闘力は高いんだよ」
 「当たり前でしょ。魔力バカより頭がいい方が役に立つでしょうし」
 「………」


 そこまでハッキリと言われてしまうと、朱栞はぐうの音も出ない。
 それに彼女が言った通り、朱栞は魔力が強いだけで、自分で扱えないのだ。彼女の方がラファエルの役立つのは必須だ。
 けれど、朱栞はラファエルと契約を結んだのは、条件があったからだ。そこまで対立する必要はないはずなのに、少し悔しくなってしまうから不思議だ。



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