囚われのおやゆび姫は異世界王子と婚約をしました。



 最近は考え事が多いとわかっている。

 初めてラファエルとデートをして出会ったホープという少年。
 そして、その帰り道に感じた強い魔力。

 その日から朱栞は考える事が多くなっていたのだ。
 それにラファエルはそれから忙しそうに日々を送っている事も関係している。
 毎日のように出かけているのだが、それがほとんど夜なのだ。彼は朱栞を起こさないようにこっそりとベットから出て行っているが、それが何日も続けばさすがの朱栞だって気づく。
 すぐに戻ってくる時もあれば、夜明け前ギリギリな時もある。帰ってくれば、朱栞を抱きしめて、すぐに寝てしまう。
 彼の吐息と体温に包まれながら、外の空気をラファエルから感じられた。そして、少しの荒くなった彼の感情を。彼はきっと外の出かけている。そして、あの魔力の正体を追っているのではないか。そう思った。
 それに、朱栞が自分の魔力の話をした時に、彼はそれを否定はしなかった。むしろ、頼りにしているとまで言っていたのだ。
 そうなると、彼が朱栞の強力な魔力を必要としてくる場面があるかもしれない、という事だ。それぐらい危険な事があるかもしれないのだ。
 そんな所にわざわざ一国の王子が赴く事などあるのだろうか。ラファエルは何をしているのか。朱栞はそれが気になって仕方がなかった。けれど、ラファエルは朱栞にそれは教えるつもりはないようだった。隠しているのは気づいていた。だからこそ、朱栞から聞くことも出来ない。
 本当の婚約者なら出来たかもしれないが、朱栞は彼の気持ちには答えていない立場だ。自分から彼に近づくことなど出来ないのだから。




< 94 / 181 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop