その行為は秘匿
次の日の放課後、私は1人で保健室へと向かった。
郁弥は田中のことをPC室で調べているようで、この後合流して情報交換をする。

「失礼します。」
「どうぞ。あら、中原さん。」
先生はいつも通りだった。
「今日は、なにかしら?また話せて嬉しいわ。先生もう暇で。」
先生はクスリと笑いながら、椅子を出してくれた。
「コーヒーでも飲む?それかお茶がいいかしら。」
わざわざ飲み物も出してくれた。
私が来たのを歓迎してくれているのだろうか。
「さあ、何を話す?」
「佐々木朱里さんと桜田菜々さんの関係のことについてです。」
「…せっかく名前を伏せておいたのに。ばれたのね。」
先生は自分の分のコーヒーを少しだけ飲んだ。
「2人はよく、この保健室で話してた。同じ病を患っていたから、話も合ったのね。普通に雑談したり、たまにはクラスの愚痴を2人して言い合ったり、でもとても生き生きしてて楽しそうだった。」
先生は、当時のことを思い出すようにゆっくりと話してくれた。
「でもある日、言い合いになってしまったの。」
「…どんな、内容ですか?」


郁弥がいるPC室まで、力が抜けたように歩いた。
階段を1段1段上って、遠くからは運動部の掛け声や吹奏楽部の練習の音が聞こえる。
郁弥を見つけた瞬間、とても安心した。
「お、話聞けた?」
ブルーライトの眼鏡を外して、郁弥がこちらを見た。
「うん。」
郁弥は、少し不思議そうに首を傾げたが、すぐなおって、また話した。
「じゃあ、今日の収穫発表するか。」
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