その行為は秘匿
医者と患者の信頼。長年の付き合いならばその度合いはますます高くなる。
実際、私だってかかりつけの医師には圧倒的な信頼をおいているし、誰だってそういうことはあるだろう。
その心理を利用したのが、今回の事件の手口だった。
田中が、薬を処方して朱里にそれを飲ませ、そして殺した。その方法はわかった。
しかし、ここで疑問が生じる。 
田中がその薬を飲む日付指定をしたとして、朱里がどの時間帯でそれを飲むかはわからないということだ。
仮に、放課後の午後5時から7時くらいの間と設定していたとしても、その時朱里の精神がとても安定していたり、2時間の間に飲んでいたとしても、田中が遺体回収のために学校の近くでずっと待機しているわけにもいかない。誰かに見つかって、通報されるかもしれない。
どうやって、朱里が死んだ瞬間を定め、回収することができたのか。
「…共犯者がいたってこと?」
そこで、ふと気がついた。
学校に目立たずいれて、朱里と関係が深く、田中に協力するような人物。
すべてが重なった。私はあのノートに書いてある文字の癖をよく見て、郁弥に再び電話をかけた。


「失礼します。先生、見せてほしいものが、」
「あら、こんな朝早くにどうしたの?」
「桜田さんと写った写真を見せていただきたいんです。」
「構わないわよ、どうぞ。」
田部先生は快く写真を手渡してくれた。
写真の裏を見ると、欲しかったものが私達の目に入った。
私と郁弥は顔を見合わせた。
「明日、これをお借りしてもいいですか?」
「それはいいのだけれど、何かに使うの?」
「宿敵を倒しに行きます。」
先生は、何かを察したような顔をした。
「ありがとうございます。朝からすいませんでした。」
「ちょっと待って!渡したい物があるの。きっと役に立つわ。」
「え、それって…。」


「明日、予約取れたぞ。」
「ありがとう。」
「でも、なんで写真にあるってわかったんだ?」
「別に勘だよ。なくても話はできるから、まあ良かったんだけど、いい証拠になりそう。」
「さすがだな。」
「でも、まさか田部先生が持ってるなんてね。」
「じゃあ美術室、早速行くか。」


「今日もお2人で、今回は診察ですか?」
初めてでは優しい笑顔だと思えたその笑みも、今では不敵な笑みに見える。
「田中先生にお話があって、今日は伺いました。」
「私に話?何でしょうか。」
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