仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。


『はじめまして、鏑木咲良と申します。よろしくお願いします』


ピンク色の振り袖を着た彼女は綺麗に指先を伸ばし合わせ、八の字にして手のひらを畳につけ礼をした。
 鏑木社長の言っていた通り、礼儀作法は幼い頃から習ったモノだ。1日や2日で身につくようなものではないことくらいわかる。


『前にも言ったが咲良は、小さい頃からどこに出しても大丈夫のようにたくさんの習い事をさせて来た。君のことをしっかり支えることが出来ると思うんだよ。蓮司くん、どうだろうか』


 顔を上げた彼女は、可愛いよりの美人だ。そして高校生とは思えないくらいに大人っぽくて……正直、一目惚れしてしまったんだと思う。俺はこの結婚はアリだ。

 だけど、彼女はこの結婚を了承しているんだろうか。こんな年上と結婚したいと思うのか謎だ。


『蓮司さんの迷惑にはならないように頑張りたいと思います』


 そう言った彼女は、無表情で何を思っているのか分からない。両親に言われ連れられて来たんだろうなとだいたい察しがついた。


『咲良さんが都合の良い日に、二人でランチでもどうですか? 一回で決めるのは私は嫌なんです』

『ぜひ、よろしくお願いします!』


そう言ったのは咲良じゃない、鏑木社長だ。本人はただニコニコしているだけ。それに少しばかりショックを受けたが、次に会う日をセッティングすることは出来た。


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