仮面夫婦だったはずですが妊娠したら、カタブツ社長は新妻への愛を抑えきれない。


 店内は、ナチュラルな雰囲気だ。花屋が併設されているためかドライフラワーがお洒落に飾られておりソファやテーブルはアンティーク調で女子受けしそうな可愛らしい空間を作っている。


「好きなものを食べていい」

「はい……ありがとうございます」


 そう言うと彼女はメニュー表を開き「これがいいです」と指さした。だからそれと自分のも注文し、本題に切り出した。


「……君は、このお見合いをどう思っている?」

「えっ……と」


 彼女はお冷やをちびちびと飲み目を泳がせる。

「俺は、君に求めることはしない。君の自由を奪うつもりはない」


 まだ彼女は若いし遊びたいだろう……彼女が望むなら大学に行ったっていい。


「……っ……」

「俺のことを愛さなくていい」


 本当は愛して欲しいけど、無理矢理好きになって欲しいなんて思っていない……ここまで言えば断られるかなと思ったが、俺の想像とは正反対の言葉が聞こえてきた。


「この結婚、お引き受けします。稲葉さんのいい妻になれるように頑張ります」


 そう、彼女ははっきりと俺にそう言った。
 それからすぐに婚約が決まり、彼女が高校を卒業するまでは月一回の食事に行ったりお出かけをしたりして結婚式を迎えた。仕事の関係で本当に結婚式関係は彼女に任せきりだったが、無事終わり夫婦になった。



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