溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。
***

今日で黒澤先生の教育実習も終わり。


女子の有志で色紙にメッセージを書いて花束を渡して、みんなで送り出した。


その放課後。


「藤森」


呼ばれてひょこひょこと黒澤先生の元へ行くと。


「ハタチになったら一緒に飲みに行こうな」


「えっ!」


そんなことを言われてびっくりしちゃう。


そこへ凪くんがやってきて、私の肩を引き寄せた。


「だれが行くか! この不良教師!」


ちょ、凪くん!?


先生にそんなこと言っちゃっていいの!?


焦る私とは反対に、黒澤先生はそんな言葉にふっと笑い。「今だけの青春、楽しめよ」と、片手を軽く上げて行ってしまった。


最後の笑顔は、心から笑っているように見えた。


……そんなに悪い人じゃなかったのかな。


そんな風に思っている私の横で、大きく息を吐く凪くん。


「これでやっと静かになる……」


「ん……?」


心底ほっとしたようにつぶやく凪くんに首を傾げれば。


「乃愛はわかんなくていいよ」


優しく笑って、頭をポンポンと撫でられた。
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