溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

そう言ったクラスメイトの前田さんのスマホを、みんながのぞき込む。


「ほんとだー」「すごい可愛い~」なんて声があがる。


……え? わたしがヘアカタログに……?


「この美容院、一度行ってみたかったんだよね~」


「知ってる~。芸能人も結構行ってるとこだよね!」


美容院……?


あっ、美容院で取られた写真のことか!


本当に載ってたんだ……。


いいカメラで撮ってくれたから、きっと100倍くらい映りが良くなってるんだと思う。


「本物のモデルさんみたいだよー。写真だから加工されてることも多いけど、ほら、そのまんまだもん!」


前田さんは周りの人たちにその画像を見せて、今の私と見比べた。


「透明感とかそのまんまだよね!」


「芸能人みたい」


ええっ。どんな映りなんだろう……。気になるけど恥ずかしくて見れない。


でもよかった、笑われなくて。


あれこれ言われるかと思ってドキドキしてたけど、心配して損しちゃった。


逆に、こんな反応にビックリだけど。


その日一日、私はずっといろんな人に囲まれていた。

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