溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

しんみりした空気を吹き飛ばすように、嶺亜はマイペースに箸を伸ばした。


「そうね、食べましょ! いっぱい食べてね」


テーブルに並ぶ料理はどれも美味しそう。


でも、私はあまり食欲がなかった。


「乃愛、あんまり食べてないじゃないか。ほら、大好きないくらだぞ」


それに気づいたお父さんが、小皿にいくらのお寿司を取ってくれる。


「うん、ありがとう」


「乃愛ってば、凪くんが家に帰っちゃうのが寂しくてご飯が喉を通らないんじゃないの?」


「お、お母さんっ!」


何言ってるの!


私は隣に座っているお母さんの腕をぱしんとたたく。


凪くんは「そんなことないよなー」なんて言って、お父さんや嶺亜と笑いあってい
た。


……そうだよ。凪くんがいなくなるのが寂しくてたまらないんだもん。
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