溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

「入学したてのころ、放課後音楽室で乃愛がピアノを弾いてるのを聞いたんだ」


「えっ、あれ聞いてたの?」


「ああ。初めは音に聞き惚れてのぞいたら、仕草に惚れて。そのあと乃愛の素顔に惚れて、性格に惚れた」


乃愛は、大きい瞳をさらに大きくして俺を見つめる。


「だから、俺は乃愛の全部が大好きってこと」


「……っ」


やっぱり目を見てちゃんと伝えられて良かった。


その方が、気持ちも伝わるはずだから。


「わ、私も凪くんが……き……」


「なに? 聞こえない」


ちょっとイジワルだったか?


真っ赤な顔を俺に向けて、手を胸の前で組み呼吸を整える姿がたまらない。


大きく息を吸い込んで、乃愛は言い直した。


「凪くんが、好きですっ……」
< 339 / 367 >

この作品をシェア

pagetop