溺愛王子は地味子ちゃんを甘く誘惑する。

今日の練習中、嶺亜がずっとそんなことを思っていたのかと思ったらおかしくてお腹がよじれそうだ。


「なんだよ。違うのかよー」


そう言いながら、嶺亜は安心したようにベンチに寝転んだ。


「バーカ」


「じゃあなんだよ」


核心に迫られると、やっぱり緊張してくる。


だから一気に言った。


「俺が好きなのは、お前の妹だよ」


あーやべえ。


余裕なふりして言ったが、内心バクバクだ。


「……」


嶺亜は無言で、しかも真顔。


その反応は、大方予想通りだった。


「どうして乃愛なんだ?」


そして、急に兄貴の顔になる。


そらきた。


別の女だったら、すぐに応援してやるとか頑張れよとか言うだろうに、やっぱり妹となればそうだよな。
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