また逢う日まで、さよならは言わないで。



私は、それからゆっくりとみんなのリビングへ戻ろうと、どの扉を開けた時だった。



「ちょっと、來花!」



扉を開けた瞬間、姉ちゃんの鋭い声が耳に入ってきて、私は思わず、顔をしかめる。



「何!?」


「なんでのり塩チョイスなのよ!」



なんだよ。


この口論、まだしなきゃダメなのか。



お姉ちゃんは、私が買ってきたのり塩を高々と掲げてくる。



「いいじゃん、買い物行ってきてやったんだから文句言わないでよ。酒飲みはサキイカでも食っていればいいじゃん」


「コンソメでしょ。どう考えてもここは!」



新たな味が登場したよ。



私は、姉ちゃんのその言葉を無視して、姉ちゃんが持っていたのり塩を奪い取り、袋を開けた。



「いや、うすしおだわ」



そこで参戦してくる直哉。



やめてくれ。


話がややこしくなる。



そんなことを思いながらも、私は抱えたのり塩をバリバリと食べ始めた。



「いーや、コンソメだね。そう思うよね、渉!」



ここで、負けず嫌いの姉はずるいことに、自分の夫をこの戦いに巻き込もうとする。


勝ち方をいとわない姉。


さすがだと思う。



だが、お酒の弱い渉さん。


もう、顔は真っ赤で半分もう夢の世界のようだ。


姉ちゃんが自分に話しかけていることすら気づいていない。



きっと、目の前のケントさんと一緒なペースで飲んでしまったのだろう。


ケントさんは、お酒強いって、直哉が言っていたから。


……記憶飛ばしがちらしいけど。



「いいや、花蓮さん。悪いけど、俺チーズ」



そういって、手をたかだかと挙げたケントさん。



いやいや、なぜまた自ら面倒くさい戦に参戦しようとするかな。



「あら、今日は賑やかで楽しいわね」



そういって、私の隣で笑っているお母さん。私の持っているのり塩味のポテトチップスに手を伸ばし、もう高みの見物モードに入っている。



これでこそ、我が家の母親だと常々思う。



「いや、ケント。王道うすしおだろ?」


「いや、コンソメだから」


「男は黙ってチーズ」



三人がバチバチと争う中、ウィスキー片手に楽しそうにその戦いをみている立花さん。



誰が何といおうと、ここにあるのり塩が私を勝ちだと言っている。



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