また逢う日まで、さよならは言わないで。



もし、1つ願いが叶うとしたら、私の願い事はもう決まっている。そんなことを聞いてくるのは愚問だ。



しかし、その願いを口にすることも、ましてや叶うことも夢のまた夢だ。



「ねえ直哉」



今日は初詣。


めでたい日。



「何?」


「何願ったの?」


「秘密」


「……けち」


「お前は?」


「教えない」



直哉は相変わらず、あのマツタケパーティー後も私の家に夕食を食べに来ることはないが、こうして毎年一緒に行っていたところや、行事には今も変わらず一緒に行っていた。


もれなく、ケントさんと立花さんも、今年は去年と違って直哉についてくることが多くなった。


しかし、お母さんは、両手に華だわ、なんていって、ケントさん立花さんがくることを歓迎している。



だから今日も、私とお母さんと姉ちゃん夫婦、直哉とケントさん、立花さんで初詣に来た。



願い事を終えた私たちは、帰り路を歩いていた。



「あんたたち、本当の兄弟のようね」



そんな様子を見て、お母さんは後ろから笑っていた。



なんだか、複雑な気持ちになる私。


直哉もどうやらそのようで、私から目をそらすのがわかった。



兄弟なんて、そんなものじゃ足りない。



そう思ってしまう私はわがままだろうか。



いつか伝えることができるのだろうか。



私の今日の願い事を、あなたに。



――――『ずっと直哉と一緒にいられますように』



決して口にはできない私の願い事。
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