誘惑じょうずな先輩。


切なそうな、泣きそうな声に、きゅうっと心が締まる。



わたしの知らない先輩が、そこにいる。


なんでだろう。

モヤモヤして、黒い感情が湧いてきて
……先輩が、わたしだけを見てくれたらいいのにって思ってしまったのは。


なんてワガママなんだろう、わたし。



先輩は、わたしのじゃない。

万里先輩は、みんなのもの。



「……めんどーな子は、すきじゃないよ」




ほら、そうやって、またはぐらかす。


だから、先輩に堕ちたひとはあなたから抜け出せないんだよ。



期待とか、欲望とか、ぜんぶごちゃまぜになってしまうから。




「……っ、ごめん、」




“ すきじゃない ”


そんなの言われたら、わたしだってそれ以上追求できる自信がない。



先輩の言葉は破壊力がすごいから。






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