誘惑じょうずな先輩。


「……先、輩。
抱きしめ、ても、いいですか」



だれに対してもつっかえてしまう、
わたしの言葉。



だけど、先輩はそんな拙いわたしを嫌がりもせず、ゆっくり頷いてくれる。

ペースを合わせて、話してくれる。


そういうところ、どうしようもなくきゅんきゅんしちゃうの。



「……いーよ。
というか、俺が、抱きしめたい」



強引じゃなくて、ふわっと、周りを包み込むように触れる万里先輩。


そういう優しさが、また中毒性として、わたしにかかってくる。



さいしょに会ったときとちがう匂い。


シトラスの、爽やかな匂い。



女の人の、匂いじゃなくて。



__ わたしが、先輩のいちばんになりたい。


また、そんな想いが膨れ上がっちゃって。


だから、





「……わたし、せ、んぱいが遊んでるの、いや、……です」



……こんなわがまま、言う予定じゃ、なかったのに。








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