誘惑じょうずな先輩。
……それだけ、で?
それだけで、ほかの女の人を切っちゃうの?
きゅうん、と胸が高鳴って、なにも考えられなくなる。
でも、それと同時に……申し訳なさがある。
「でも……、先輩のことが好きな女の人はたくさんいるんですよ……?」
そうだよ。
いまのいままで、先輩はプレイボーイだったわけで。
その縁は、簡単には切れないと知ってる。
控えめに問うと、先輩は背が高いからかわたしにのしかかりながら、小さく言った。
「……さっき、女の子に泣かれた」
「……え、」
悲しそうな先輩の言葉に、つっかえる。
のしかかる先輩を起こそうとするけど、
ぎゅっと抱き締めて離してくれなくて、諦めた。
だって、先輩、珍しく弱ってるから。