誘惑じょうずな先輩。


……いや、この人のことを鵜呑みにできるほど純粋な人間ではない、と思う。



……、わたしには関係ないけど、先輩、遊んでばっかだもん。



女の子が喜ぶ言葉、きっとぜんぶ把握してる。



なんて返せばいいんだろう、と考えていたら、先輩は保健室のベッドに腰掛けた。



「ねーえ、ゆんちゃん」



クイっとスカートの裾を引っぱられ、びっくりして先輩を見る。


聞いたことないくらい甘い声。

誘惑。




「ゆんちゃん、男いる?」



逃がさない、だけど、優しく。


正直に口を滑らせてしまう、その聞き方。




……、慣れすぎて、やだ。





「い、ませんっ……」



ばかにするなら、すればいいよ。


先輩みたいなチャラチャラプレイボーイからしたらわたしみたいなのはつまらないと思うけど。



わかってるくせに、聞くの、ほんとわるい。








< 17 / 303 >

この作品をシェア

pagetop