誘惑じょうずな先輩。


また、あっまいこと言って。


ポカ、と弱く先輩を叩いたら、とたんに腕を掴まれて……、

____ 唇を、奪われた。




「ねえ、ゆんちゃん」


「な、んですか」



不意打ちのキスに慣れないわたしは、そんなつれない返事を返すので精一杯。


だけど、万里先輩は違う。


にっと笑って、ふたりだけの世界に誘い込む。




「予鈴まで、ゆんちゃんをちょーだい」



「んっ、……」





予鈴……、あと2分だよ。


だけど……、たまには溺れるのもいいかな、なんて。




そんなふうに、誘惑じょうずな先輩は優しく甘く、

____ 愛をくれる。








「すきだよ、ゆんちゃん」




そのゆるくて、苦しい、

それくらいの愛に、(いざな)われていたい。








____ そんな、万里先輩の、誘惑に。


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