誘惑じょうずな先輩。
惑い
ほしい先輩
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「あ、もどってこないかと思った」
予鈴ギリギリに教室に駆け込み、急いで席についたわたしに、となりから聞こえてくる声。
夏川くん、さっきもいまも変わらない飄々とした雰囲気。
「そ、……そりゃ、授業だから」
なるべく目を合わせずに答えると、夏川くんは面白そうに言う。
「怒って出てったひとが、そこは真面目なんだ」
言い返せない。
「いや、もう、あの、怒ってないから……っ」
あれは、ちょっとフキゲンだっただけで。
夏川くんが万里先輩の話題を出すからいけないんだよ。
人のせい、ちょっと許してほしい。
夏川くんがなにを思ってるのか、なんてだいたいわかる。
『ばかな女』
ぜったい、そうやって見くびられてる。