幼馴染からの抜け出し方

「なにそれ、ひっどー。森谷君ってそんなことする人だったんだ」

「うん。そんなことする人だったらしいよ」


 元彼の森谷君も私とゆかりの同期で、営業を担当している部署にいる。

 入社してしばらくは同期というだけでそれほど親しいわけではなかったけれど、おととしの年末に開かれた同期会で距離がぐんと縮まり、ふたりで食事に出かけるようになった。

 だんだんと森谷君のことが気になり始めた頃に告白されて交際がスタート。あのときは、まさか結婚の約束をしている本命彼女がいるとは思いもしなかったし、まさか自分が適当に遊べる浮気相手に選ばれたことに気が付きもしなかった。


「私ってやっぱり男を見る目がないのかもしれない」


 とれかけのパーマヘアをばっさりと顎のラインまで切ったショートボブの髪を、両手でわしゃわしゃとかき回す。すると、そんな私の肩にゆかりがぽんと片手を乗せた。


「たしかに、めぐみは男運がないよね。前の彼氏は束縛魔のストーカーだったし、その前の彼氏も……」

「やめて! 束縛ストーカー男の話はしないで。思い出したくないから」


 両手で耳を塞ぎながら首を振る。あの人は、本当に最悪だった。

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