幼馴染からの抜け出し方

「どうしたの？」


　立ち止まって振り返ると、由貴ちゃんが一歩だけ前に出て、私との距離を詰める。


「俺が出張に行っている間、また変な男に引っ掛からないように」

「うん、気を付ける」

「もしも言い寄ってくる男がいても無視すること」

「はい。そうします」


　私もしばらくは彼氏はいらないと思っているから同意してうなずいた。


「それと……」


　さっきまですらすらと話していた由貴ちゃんの口が突然、閉じてしまった。それと……に続く言葉がなかなか出てこない。


「由貴ちゃん？」


　どうしたのかと思い顔を覗き込むと、視線が静かにぶつかった。由貴ちゃんが少し声のトーンを落として続きの言葉を口にする。


「お願いだから、俺が出張から戻るまで彼氏は作らないで」

「え？」


　もしかして由貴ちゃんは私のことを心配してくれているのだろうか。

　当たり前だよなぁと思う。私がダメ彼氏ばかり作ってしまうせいで、この前も頬を腫らして由貴ちゃんの家にお世話になったし、その前はストーカー彼氏から助けてもらった。

　そりゃ心配にもなるよね。ごめんね、男運の悪い幼馴染がいつも迷惑をかけて。