幼馴染からの抜け出し方

「突然、俺の気持ち知ったから驚いたよね。でも、さっきの言葉に嘘はないから。俺は、この幼馴染って関係から抜け出したい」


 恥ずかしくて逸らしていた視線をそっと由貴ちゃんに戻すと、いつにない真剣な眼差しが私を見つめていた。



「俺は、めぐみが好きだよ」



 瞬間、トクンと心臓が跳ねた。

 私の肩に乗っていた由貴ちゃんの手が私の背中へと回される。そして、ふわっと優しく抱き寄せられた。



「幼馴染じゃなくて、俺はめぐの彼氏になりたい」



 ドクンドクンドクン。と、心臓の鼓動が早くなる。

 ずっと幼馴染だと思っていた由貴ちゃんから突然、想いを打ち明けられた私は動揺で頭がうまく働かない。

 どうしよう。どう答えたらいいんだろう。

 ぐるぐるといろんなことを考える。けれど、やっぱりうまく考えられなかった。

 私は、私を抱き締めている由貴ちゃんの胸に両手をつくと、ドンと勢いよく押し返した。その拍子で私の背中に回っていた由貴ちゃんの手が離れたので、そのすきに距離を取る。そのまま走って、私はその場から逃げ出した。


「めぐ!」


 後ろから由貴ちゃんの声が聞こえたけれど振り返らなかった。

 逃げるなんて最低だ。そうわかっているのに、突然の由貴ちゃんの告白に動揺してしまい、これ以上あの場所にはいたくないと思ってしまった。

 そのまま実家へと逃げ込んだ私は、玄関の扉を勢いよくしめた。


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