またいつか君と、笑顔で会える日まで。
急ぎすぎてつまづきそうになり慌てて大勢を整える。

家を出てからそんなに時間は経っていない。

まだ近くにいるはずだ。

必死に走っていると、視界に見覚えのある後姿をとらえた。

――いた!!

走るのをやめて早足に切り替える。

「リリカちゃん!」と大声で叫ぶのはなんだかはばかられるし、こんな暗闇の中突然駆け寄っていけば怖がらせてしまうかもしれない。

近くまでいってから声をかけようと決める。

この辺りは街灯も少なく夜間の人通りや車はまばらだ。

そのとき、静まり返っている夜道でリリカちゃんの小さな声がした。

「――い」

彼女はスマートフォンを耳に当てて誰かと電話をしているようだ。

大声で呼ばなくてよかった。電話の邪魔をしてしまうところだった。

ホッと胸を撫で下ろしてさらに距離を近づける。

もう少し近付いて電話が終わるタイミングで声をかけよう。

距離が近付くにつれて、心臓がドキドキしてくる。何を話せばいいのか自分でも分からぬまま彼女のことを追いかけていた。

そうだ。母が家まで車で送ると言っていたと伝えよう。そうすれば追いかけてきても変ではないだろう。

そのとき、突然彼女がピタリとその場に立ち止まった。

私もつられて足を止める。

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