心理作戦といこうか。
騒々しかった空間が一気に静寂に包まれる。
見慣れた37階からの景色と違い何処となく生活感を感じさせる景気を見渡す真琴が口を開ける。
セキュリティとタイムロスを考え4階の部屋にした。
引っ越してみれば彼女の気持ちが良く分かった。
確かにエントランスからの時間、忘れ物を取りに戻る憂鬱な気持ちが一切ない。

「なんか、騒々しい引っ越しになったね。」

「そうだな。
 大人の手が五人分増えるとだいぶ楽で助かった。
 真琴はお腹張ってないか?
 以前の検診で引っ越しでお腹の張りには気を付けるように言われただろ?」

「ふふふ。うん、大丈夫だよ。
 なんだか二人っきりで話すの久しぶりに感じるけど玲君はやっぱりいつもと変わらない過保護の玲君なんだなって安心した。」

「それでも、今はいつもと変わらない関係ではないからな。
 今までは兄妹の様に思ってたかも知れないがもう夫婦なんだ。
 手加減ご無用って事で色んな意味で真琴を可愛がれる。」

「何それ。
 玲君はずっと甘やかしてくれてるよ。」

ちょっと、いや、だいぶ意味は違うがまあいい。
そっと真琴のお腹に手を当てると時々元気良く蹴るまだ見ぬ我が子をいとおしく感じ顔が歪む。
賑やかな世界に慣れてしまった俺たちだから二人でその世界を守ろう。
果てしなく続くように。
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