推しを愛でるモブに徹しようと思ったのに、M属性の推し課長が私に迫ってくるんです!
西浦さん視点
 あの日、私の全てが変わった。今までの人生は何だったのかと二十歳そこいらで涙を流し、過去の私に「馬鹿め!」と声を上げたのだ。


 西浦瑠璃子、当時二十歳にしてBLに目覚めました!


 私が二十歳の頃は、世の中ではBLが一般でも受け入れられ出し、テレビでも紹介されていた。私は大学生で、別にBLに興味のある女子ではなく、普通の恋愛を楽しみ、普通の少女漫画をたまに愛読するぐらいだったのだ。


 そんなある日、母が毎朝楽しみにしている朝の連続ドラマを横で何気なく見ていると、イケメン俳優が何だか意味ありげに別の男性俳優を見ている。気になった私はその放送をジッと最後まで観てしまったのだ。


「ルリちゃん、面白かったでしょ? あの役の二人はねえ、ウフフの仲になるのよ、ウフフ」


 母の言う意味が分からなく、少し呆然として「え? 男同士よね?」と返す私に、母は「ルリちゃん古い! 今は性別なんて関係ないのよ」と衝撃の事実を話し出したのだ。


「ルリちゃん、お母さんのコレクションでも読んでみたら?」


 その時に母に渡されたのは男性同士のソフトな絡みがある漫画だったのだ。


 子供の時に読んでいた漫画雑誌と言えば「り○ん」「な○よし」で、それも小学生まで。中学に上がると「花と○」方面に行く女子も居たが、私は「マー○レット」に行く。流行の恋愛モノ漫画にキュンキュンして、高校生になったら素敵な彼氏が出来ると夢見る少女だった。部屋の隅で 「花と○」を読んでいる女子達が、何やら不思議な話をしていたが、私は特に興味をそそられなかったのだ。


 高校に進学すれば何だかんだと彼氏ができ、漫画より現実の恋愛を知り、そちらにのめり込んでいく。漫画は友達に借りる程度だった。


 大学生になれば合コンだ何だと忙しい毎日を送り、次第に漫画は全く読まなくなっていた。


 そんな私が久しぶりに手に取ったのがBL漫画というもので、頭の中は衝撃でグワングワンと回っていたのだ。


「お、お母さんありがとう……。時間がある時に読んでみるね」


 大学の授業に遅れそうになった私は、母の本を鞄に仕舞いそのまま家を出たのだった。
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